ーーカフェ・コピカン(岡林農園)
今回のインタビューでは、柑橘農園とコーヒーが結びつき、カフェを開くことになった経緯や思いを、株式会社岡林農園の岡林亮太さんに伺いました。
――さっそくですが、カフェ・コピカンが誕生することになった経緯を教えていただけますか?
岡林農園では柑橘の栽培だけではなく、加工品の販売もしているんです。オーストラリア、インドネシア、アメリカ、ブラジルなど、海外にも幅広く輸出をしています。海外では日本の柑橘って、すごく人気があるんですよ。そのメインの輸出港が、横浜港で。それで以前から、横浜に拠点を作ることは計画をしていました。
ただ、そうこうしてるうちにコロナ禍になってしまって……。うちの加工品は飲食店さん向けにもかなり提供していたので、売上が半分以下まで落ちました。このままじゃいけないと農園の経営を立て直す道を探るなか、新たな拠点を作る予定だった横浜で、カフェと物販を兼ねた新しい事業を始めるアイデアが生まれました。
インドネシアのアチェ県と、もともと交流があったことがきっかけのひとつですね。アチェ県はコーヒー豆の栽培がさかんな地域で、カフェ・コピカンで提供しているガヨ・マウンテンコーヒーの産地です。
岡林農園では、2016年からJICAと協働してインドネシアの地域活性のために、農業研修を行なってきました。うちは、栽培から加工、製造、販売まですべて自社で行う、高知県でも有数の“6次産業企業”なんです。また、農家さんたちを取りまとめる農業法人でもあるので、たとえば周辺で管理できなかった土地を我々が買い取り、活性化させ、再び雇用を生んで地域を活性化するといった取り組みにも長年力を入れてきました。これらの活動に注目していただき、「うまく活性化できずに困っている世界中のさまざまな地域をサポートしてほしい」と、声がかかったんです。
それでサポートをすることになったのが、インドネシアのアチェ県でした。
アチェは首都のジャカルタから10時間以上かかる田舎町で、山も川もあって、本当に自然豊か。高知と、どこか環境が似ているんですよ。そんなアチェのコーヒー栽培では、シェードツリー(コーヒー栽培に適した環境を保つために植える、日よけとなる木)として柑橘が植えられていました。これにご縁を感じ、アチェでの柑橘栽培を6次産業化するサポートができたらということで、うちのノウハウを提供することになりました。
でも、これもコロナによって、うちに来ていた研修生たちが途中で帰らないといけなくなってしまって。せっかくできたつながりがこのまま消えてしまうのはもったいないなと、日本ではまだ希少なアチェのコーヒー豆をフェアトレードし、うちでプロモーションするという形で少しでもサポートを続けたいと考えました。さらに、輸入した豆を岡林農園の新たな事業にも結びつけることができたらと、カフェの立ち上げにたどり着いたんです。
もとは、コロナ禍による苦しい状況を打開するために……と生まれたアイデアでしたが、結果的に人や国とのつながりによって新しい挑戦ができたので、とても思い入れがあります。まだオープンして間もないですが、本当にやってよかったなぁ、と。それに、柑橘とコーヒーって、めちゃくちゃ合うんですよ。
柑橘にもさまざまな種類があって、とくに高知の名産でもある文旦は、ざっくり表現するとグレープフルーツ系の柑橘です。苦味と甘みのバランスが、コーヒーとの相性も良いんです。「小夏」という日向夏系の柑橘は爽やかな酸味が魅力で、これもガヨ・マウンテンと合うんですよね。
皆さん、コーヒーと言ったらコクと苦味の強いものをイメージされる方が多いかもしれませんが、うちはどちらかというと中煎りから浅煎りで、豆自体の味を楽しんでもらうことにこだわりを持っています。
カフェでは柑橘果汁を使用したスイーツや、柑橘シロップを使ったドリンクも提供しているので、こうやってアチェのコーヒーと岡林農園の柑橘をうまくコラボレーションさせて、双方の魅力を知っていただけるような場所にしていきたいですね。
今はまだ取り扱い数が少ないですが、岡林農園の加工品や、テイクアウト用やギフト用のコーヒー豆など、物販も今後さらに充実させていきたいと考えています。
なかでも、ジャムは特に万能でおすすめですね。僕もちいさい頃からずっと食べてきた味です。パンに塗る以外にも、ヨーグルトにかけたり、料理のソース使ったりしてもおいしいんです。さっぱりとしていて甘すぎないので使いやすいんですよ。
最近では、お客さまから「こんな使い方をしてもおいしかったよ」と、意見をいただいたりもします。そうやって声をかけていただくことでコミュニケーションも生まれて、非常にうれしいですね。
以前はデパートの物産展で全国をまわることも多かったのですが、ここ2年ほどはコロナの影響で出店もできなかったので、こうやって直接お客さまと接することができる場所になったというのも、カフェ・コピカンの大きな価値だと感じます。
――カフェ・コピカンが、高知県の魅力を発信する新たな拠点にもなっていきそうですね。
そうなるといいですね。僕たちの取り組みが刺激になって、もっと県を挙げての活性化にもつながっていけば、なんてことにも期待しています。
高知ではいま、柑橘の生産量が年々減っているんですよ。近年の気候変動の影響もそうですし、農家さんが減っているというのもあります。一方で海外からの需要は伸びているので、原料不足に悩まされていて。
原料不足以外にも、今回のコロナ禍だったり、周辺原材料の高騰だったりと、今後もさまざまな問題に対処しながら、事業を模索していく必要があります。だから、まだまだやることや考えることがたくさんありますね。これからも固定概念にとらわれず、新しいことには恐れずチャレンジしていきたいと思います。