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ドリッパーができるまで

2021.03.15

折り紙のように薄いドリッパーができるまで。

ORIGAMIドリッパーは、土選びに始まり、①成型(鋳込み成型orろくろ成型)②素焼き③施釉④焼成⑤検品という大きく5つに分かれた工程でつくられていきます。





薄いボディと20の細かいひだが特徴のORIGAMIドリッパーは分業制でつくられています。瀬戸焼で有名な瀬戸市の委託先で素焼きまでを担当し、その後の工程を光洋陶器株式会社が担当するチームプレイ体制です。



全行程、手作業で作られるORIGAMIドリッパー




ORIGAMIドリッパーの 最大の特徴は、おりがみの名の通り紙のような薄さ。この厚みと細かいギザギザのひだ部分をどのように作っていくのか、制作工程の素焼きまでのお話を伺いしました。説明をしてくださったのは委託先の山口さん。



工程:①成型(鋳込み成型orろくろ成型)②素焼き③施釉④焼成⑤検品




山口
まずは土作りからはじまります。白磁(はくじ)という土を攪拌器で6時間ぐらい練りこみ、圧力タンクに移動させて、土の中にある気泡をぬいていくんです。気泡の入った状態の土を焼くと、はじけて割れてしまうから、この基本作業は大切です。






山口
土ができたら、鋳込み師という職人の出番です。ドリッパーの形をした型の小さい穴から土を流し込んでいきます。これを鋳込み成型といいます。
私たちも40年生地を作ってきていますけど、びっくりするぐらいORIGAMIドリッパーの生地はうすいんです。だから、小さい穴から土を流し込みます。

ちなみに、穴は数ミリサイズ。大きな穴から入れてしまうと、ドリッパーのギザギザのひだの部分が潰れてしまう。また、粘性が悪い土だと、小さい穴から入らないようになるし、逆にシャバシャバな水のような土だと中で固まらない。とにかく見た目以上に、つくるのが難しい商品なんですよ。



土を流し込んだあと、まっすぐ上に慎重に上部の型をとりはずします。ここの作業に一番手がかかります。少しでも気を抜くと、のこぎりの部分を型で傷をつけてしまう。


土の流し込み部分がでっぱっていますので、このでっぱりも全て手作業でならしていきます。


念入りに、はけで面をきれいにしていきます。


20の細かいひだ部分が潰れていないか念入りにチェックしていき、ときには手で成型していきます。グローブの左手の指部分だけをあけているのも、滑らかになっているかどうかを指の感触で探っていくため。



>細かい、、、!

山口
本当に制作は大変なんですよ。この薄さとひだの細かさは他ではできんのでは?と思ってます。



空気の通り道、20のひだをより綺麗に

鋳込み成型後、夜から朝方まで乾かし、仕上げ作業へ。





山口
ここからは、ひだ部分を整え「ばり」をとる作業です。ここもすべて、手作業。ばりとは、鋳込み作業時に上の型と下の型の接地面がうむ、薄い段差のこと。ばりを全てきれいな水で研磨し、滑らかにしていきます。しかし、ひだが作るかどの部分は丸くなってはいけない。研磨で簡単に割れてしまうので、注意深く扱っていきます。



かれこれ10年になるという加納さん。細かい作業で、肩がこります〜とのこと。


焼き台に乗せる作業も、そっと優しく

素焼きの工程は神谷さんがひとりで担当しています。1日に何百個、何千個と焼いてゆきます。


工程:①成型(鋳込み成型orろくろ成型)②素焼き③施釉④焼成⑤検品


山口
お昼に火をつけ、夜の23時ごろまで約11時間〜12時間焼きます。窯の中は上と下で温度差があります。ゆっくり温度をあげていくことで、窯の中の温度ムラをなくします。通常のお皿は、10枚ほど重ねて素焼きが可能ですが、一般的な陶器より、生地が薄いORIGAMIドリッパーは3枚重ねるのが限界です。そっと、丁寧にのせていきます。

>担当の神谷さんの動きがとても静かで機敏ですね。

山口
乾燥済みとはいえ、わずかな衝撃で欠けてしまうほど繊細なんです。


そしてじっくりと時間をかけ焼きあがったORIGAMIドリッパーを最終検品する小寺さん。



>これで完成ですね!

山口
いえ、まだまだ作業は続きます。鋳込み作業時から各パートで気にかけ続けていたひだ部分が潰れていないか、ばりがでていないかなどの念入りな最終チェックをしていきます。


とにかくチェック。


まだまだ念入りにチェックする。1日に何百個のORIGAMIドリッパーをチェックします。






素焼きまでを終えたORIGAMIドリッパーは次の工程に移るため、光洋陶器に移動します。




色をつける、施釉の行程へ


工程:①成型(鋳込み成型orろくろ成型)②素焼き③施釉④焼成⑤検品

ここからの工程は、光洋陶器の専務取締役である加藤さんにお話を聞きました。



 

加藤
ここでは、素焼きされたORIGAMIドリッパーに色を付ける作業を行います。施釉と呼ばれる作業です。釉薬と呼ばれる色のついたガラスの粉を陶器の表面に付けていきます。

>陶器の色は、ガラスの粉でできていたんですね。知りませんでした。

加藤
陶器の色は、表面のガラスの粉を酸化・還元の反応をさせ焼成することによってできます。





加藤
ひとつひとつ色むらが出ないように、釉薬につけていきます。



加藤
色むらができないように垂直に入れ、垂直に引きあげます。ここで重要なのはすべて、同じ秒数、漬け込むことです。





加藤
ORIGAMIドリッパーに刻まれたひだは、バリスタの方がハンドドリップをする際、最適な抽出時間になるように計算されて生まれたもの。釉薬のわずかな厚みの差で抽出時間が変化し、コーヒーの味が変わる可能性があります。そのため、作り手全員がこのひだの部分を意識しながら作業しています。



素焼き、施釉されたORIGAMIドリッパー。素焼きを経ているとはいえ、まだまだ繊細です。


ORIGAMIドリッパー、最後の工程へ




工程:①成型(鋳込み成型orろくろ成型)②素焼き③施釉④焼成⑤検品


加藤
最後にもう一度ひだの部分や色むらなどをチェックし、そっと焼き台に乗せられていきます。

>またチェックですか!

加藤
大事な作業です。入念に行います。




加藤
最後に40mにおよぶ窯で、焼成して完成です。急な温度変化があると、熱をかけている段階で歪んでしまうので、30時間ほどかけ、じっくり焼いてきます。

そして、検品後ORIGAMIドリッパーの完成です。








年間に数千種類の陶器商品をつくる光洋陶器でさえ、ORIGAMIドリッパーの生産はかなり難しい部類に入るとのこと。

テキストと写真では伝わりにくいのですが、作り手全員が、小動物を触るかのように、常に優しく優しくふれていたのが印象的でした。

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