理想的なコーヒーは、飲む前から、すでに美味しい。

理想的なコーヒーは、飲む前から、すでに美味しい。

フリーランス / バリスタ 石谷貴之

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2018.06.12

こんにちは。ORIGAMI JOURNAL 編集部です。

今回のゲストは、2017年度の日本バリスタチャンピオンシップで優勝した石谷さんです。

石谷さんは、2012年からフリーランスのバリスタとして活動を開始。公式の競技会で腕を磨きながら、契約店の新人バリスタ育成や店舗の立ち上げ、オペレーションの作成など、コーヒーのコンサルティングを行っています。

現在は、オランダ アムステルダムで開催されるワールドバリスタチャンピオンシップ2018に向けて鋭意特訓中。この大会で石谷さんが使用するオリジナルカップのメーカーとしてケーアイが選ばれ、今回の取材が実現しました。

取材の場所は、石谷さんの活動をサポートしているFBCインターナショナルさんの事務所で行われました。どうぞお楽しみください。

 

フリーランス / バリスタ 石谷 貴之
2005年、東京都内のカフェでバリスタとして勤務。2012年に独立、フリーランスのバリスタとしての活動を開始。コーヒーのコンサルティング業務に携わりながら腕を磨き、2017年 日本バリスタチャンピオンシップで念願の優勝。世界バリスタチャンピオンシップ2018への参加が決まっている。(この取材は世界大会前に行われました)

ウェブサイト 
http://taka-ishitani.com/

時代の流れに合わせて生まれた、世界で戦うカップ。

加藤
世界大会を目前にして、お時間をいただきありがとうございます。
(今回の取材は、世界大会1ヶ月前に行われました)

石谷
いえいえ、こちらこそ、大会用に素敵なカップを作っていただいて。

加藤
最初、参考に見せてもらったカップがとてもユニークで、私どもも意欲的に取り組ませていただきました。サイズがとても特徴的です。このアイデアは以前からお持ちだったのでしょうか?

石谷
これはいわゆるエスプレッソカップとラテカップの中間のサイズなのですが、あまり日本では見かけたことがないですね。

きっかけは、公式競技会でのルール変更です。僕らが参加する公式競技会に、ミルクビバレッジという競技があります。これは、エスプレッソとミルクが混ざった状態で提供するドリンクなのですが、数年前にカップサイズの制限が取り払われたんです。以前は150-180ccのカプチーノカップでした。

でも、最近のスペシャルティコーヒーは、酸味があるスッキリとしたコーヒー豆が主流です。そういった豆に、従来のカップサイズに合った分量のミルクを入れると、コーヒーが負けちゃうことがあるんです。

だから、ルール変更に合わせて海外では小さなカップが少しずつ出てきていて、日本でもぜひ作りたいとケーアイさんにお声がけさせていただきました。

加藤
競技会の規定が変わった、という背景があったのですね。審査基準にも変化がありましたか?

石谷
ここ5,6年にかけて感じるのですが、コーヒーのレベルがすごく上がっていますね。豆の品質、ロースターの焙煎技術、マシンの性能、それにバリスタのスキルも以前とは比べものにならないぐらい高いです。正直、純粋にコーヒーの味だけで飛び抜けるのは非常に難しいでしょう。

では、バリスタはどこで差をつけていくかというと、お客さまへのサービス、プレゼンテーションといったクリエイティブな部分です。国際大会でも、単に技術というよりはバリスタの人間性も含めた総合的な評価をしようという流れになってきたと感じています。

フリーランスのバリスタ、という働き方。

加藤
石谷さんは2017年の日本バリスタチャンピオンシップで優勝されましたが、フリーランスの方では大変珍しいとお聞きしました。そもそも、フリーランスという働き方はカフェ業界では一般的なのでしょうか?

石谷
僕が独立した当時、2012年ではずいぶん少なかったと思います。バリスタはカフェに所属することが当たり前でしたから。

加藤
どのような経緯で独立されたのですか?

石谷
最初に働いた都内のカフェを辞めたときに、少し自由な時間があったんです。そのとき、FBCの上野さんに「カフェの立ち上げの仕事があるから手伝ってみない?」と声をかけてもらったんです。

3ヶ月お店の立ち上げを手伝ったら、また別のお店の立ち上げがあって、それを半年ぐらい繰り返しました。その時に、バリスタってこういう働き方もあるんだと気づいて、そのまま独立したんです。時期としてはカフェが一気に増え出した頃で、タイミングも良かったと思います。

加藤
FBCの上野さんとは元々お知り合いだったんですか?

石谷
初めて日本バリスタチャンピオンシップに出場した時からですから、12年近くでしょうか。上野さんには、今回の世界大会出場もサポートしていただいて、本当にお世話になりっぱなしです。

 

[人物紹介]
有限会社 FBCインターナショナル 代表取締役社長 上野登
2006年に有限会社FBCインターナショナルを設立。2005年から2009年まで、一般社団法人日本スペシャルティコーヒー協会 理事・事務局長としてスペシャルティコーヒーの普及・市場拡大に従事している。

上野さんの記事はこちら

加藤
ところで、フリーランスのバリスタというお仕事にあまり馴染みがないのですが、お仕事内容をお聞きしてもいいでしょうか?

石谷
人によって内容は異なると思いますが、僕の場合は契約店のコーヒー部門を監修するケースが多いです。コーヒー豆の選定やマシンの選定、あとはそこでコーヒーを淹れるバリスタ、スタッフの育成が主な仕事です。

最近は、ファッションとか異業種の方がカフェをやりたいというケースが非常に多いのですが、やっぱりどこから手をつけていいかわからないと仰います。そういった会社さまに呼ばれて、スタッフのレベルアップやメニュー開発などを一緒になってやっていきます。

加藤
まるでコンサルタントのような働き方なんですね。

石谷
セミナーやイベントといった単発のものもあります。……ただ、そうですね、コンサルタントのようにある程度の期間、しっかり入り込んで、レシピやメニューの提案もして、お店を一緒に作っていく方が結果に繋がっていると思います。

僕らの仕事は、バリスタを育てたら終わりじゃなくて、そのあとの方が大事なんです。ある程度の技術って、ある程度練習したら出来ちゃうんですよ。そこから本人がどれだけ頑張れるか、その辺りのケアを心がけています。

飲む前から、すでに美味しそうな空間づくり。

加藤
日本チャンピオンになって、様々なお店のコンサルタントをされてきて、バリスタという仕事に対する印象は変わりましたか?

石谷
僕がこの業界に入った24歳の頃は、ただコーヒーを淹れるのが楽しくて、とにかく美味しいコーヒーを淹れることが重要でした。でも、今バリスタには大きく2つの役割が求められていると思っています。

ひとつは、お店のマネジメント。たとえばコーヒー豆の原価を把握して、最適な売値を提案できるとか、流行を掴んだメニュー提案ができるとか、スタッフへのリーダーシップを持てるとか。きちんと数字やお店の状態を把握して、オーナーと対等に話ができること。これは非常に大事なことだと思います。

もうひとつは、サービスへの意識です。当たり前の話に聞こえますが、これが何よりも重要です。

僕はバリスタという職業を、職人というよりはサービスマンとして捉えているんですね。このバリスタに会いたい、このバリスタのコーヒーを飲みたい、と思われるサービスを提供できるかどうかで、そのバリスタの価値は決まるんじゃないでしょうか。

加藤
なるほど……。私が持つバリスタへの印象は、もっとコーヒーの味そのものにフォーカスする職人的なイメージが強かった気がします。

石谷
もちろん、美味しいコーヒーを出すのは大前提です。でも、今はいい豆もいい焙煎機も手に入るので、味だけで差をつけるのはすごく難しい。それに、これだけたくさんのコーヒー屋さんができて、じゃあ残るのはどこか? と考えたら、それはコーヒーが美味しいだけじゃないお店だと思うんです。

いい雰囲気の音楽が流れて、居心地がよい接客で、会いたくなるバリスタがいて、それだけ揃っていたら、コーヒーを飲む前からすでに美味しそうじゃないですか(笑)。その空間づくりこそが、バリスタの役割だと僕は考えています。

加藤
そのサービスをする意識は、競技会でも同様なのでしょうか?

石谷
もちろんです。競技会では、僕らは審査員にプレゼンテーションをするんですよ。いかにこのコーヒーが素晴らしく、どんな体験をしてほしいのか。もちろん、アピールには様々な方法があり、言葉では伝えず提供する競技者もいます。

僕は、飲む前の期待値を上げたくてアピールします。飲んで、もし期待以上だったら感動しますよね? そういった提供の工夫って、お店でも重要なことですし、その意識をもって次の世界大会に挑みたいと思います。

加藤
世界大会、楽しみですね。今日は本当にありがとうございました。素晴らしい結果を期待しています!

石谷
ありがとうございます。初めての世界大会なので、まずは、自分自身が楽しみます。そして、いろんな方に応援してもらっているので、結果で恩返しできるように頑張ります。

いかがだったでしょうか。日本NO.1に輝いたバリスタの話は、コーヒーに限らず、サービス全般に通じる話のように感じました。ちなみに石谷さんが参加されるワールドバリスタチャンピオンシップ 2018は、オランダ アムステルダムで6月20日から開催されます。このタイミングにオランダに行かれる方は、ぜひ石谷さんの勇姿をご覧ください。

また、石谷さん監修のもと、大会仕様に作られたオリジナルカップ「5オンス ミルクビバレッジカップ」は大会終了後に一般発売されるとのこと。こちらの情報はORIGAMI JOURNALでもお伝えさせていただきます。

次回もお楽しみに!

 

今回取材させていただいた石谷さんは、フリーランスのバリスタとして、様々な店舗や企業のコーヒー部門をサポートしています。興味がある方は、ぜひ下記ウェブサイトよりお問い合わせください。


石谷貴之 ウェブサイト
http://taka-ishitani.com/ 

加藤信吾

Kato Shingo

with Barista ! 編集長 ライター / コピーライター
ORIGAMIのブランド設計に外部パートナーとして携わるなかで、様々なバリスタと出会い、各地のスペシャルティコーヒーに感動し、気がつけば一日2杯のコーヒーが欠かせない日々を送る。
twitter:@katoshingo_

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