バリスタに夢見る若者を育て、中国独自のコーヒーカルチャーを創りあげる。
バリスタに夢見る若者を育て、中国独自のコーヒーカルチャーを創りあげる。

バリスタに夢見る若者を育て、中国独自のコーヒーカルチャーを創りあげる。

UNiUNi(中国・南京) オーナー/张寅喆

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2018.09.03

こんにちは。ORIGAMI JOURNAL 編集部です。

今回のゲストはWBC(ワールドバリスタチャンピオンシップ)の元中国チャンピオンで、世界大会でも入賞経験のある张寅喆(ジェルミー・チャン 以下ジェルミー)さんです。

2013年にWBC 中国3位入賞を皮切りに、2014年、2016年と2度のWBC 中国チャンピオンに輝き、その後もカフェを経営する傍ら中国各地のバリスタに情報発信を続けるジェルミーさんは、まさに中国のコーヒーカルチャーを牽引する存在。ジェルミーさんが運営する南京のカフェ「UNiUNi」は、前回のインタビューに登場した2018 中国ブリュワーズカップチャンピオンの杜嘉宁(ドゥ・ジャーニン)さんが所属するカフェでもあります。

今の中国市場をふまえた未来予想図と、ご自身で描く未来を語ってくださいました。どうぞお楽しみください。

UNiUNi(中国 南京)
オーナー 张寅喆(ジェルミー・チャン)
2013年にWBC 中国3位入賞。2014年、2016年と2度のWBC 中国チャンピオン。2017年にはWBC 世界大会でベスト8に選出。自身が経営する南京のカフェ「UNiUNi」 の由来はunique(個性)とunited(つながり)。独特の個性が集まり、コミュニケーションをとりながら縁を結んでいく。それがUNiUNiのコンセプトであり、目指すべきバリスタ像。

UNIUNI web
https://weibo.com/u/5121061202

コーヒーの土壌がない国だからこそ、自分が作ろうと思った。

加藤
世界的なバリスタ競技会で優秀な成績をおさめ、現在は中国でカフェを3店舗経営されているジェルミーさんですが、コーヒーとの出会いはどのようなものだったのでしょうか?

ジェルミー
私は学生時代、オーストラリアのメルボルンに留学し、そのまま現地で働き始めました。確か2008年だったと思います。ちょうどメルボルンではスペシャルティコーヒーが生まれ、発展していこうとする機運が高まった時期です。その変化を目の当たりにし、大きなビジネスチャンスを感じたことが印象に残っています。

加藤
その後、帰国をしてコーヒーの世界に入られたわけですね。

ジェルミー
はい。当時の中国にはコーヒーカルチャーの影も形もなく、だからこそ自分で育ててみたいと思いました。

ただ、コーヒーに関しては圧倒的に経験値の低い国なので、手探りでの出発でした。豆の選定や焙煎技術はもちろん、そもそもミルクの品質が低いといった課題もありました。何もかもがゼロスタートだったのです。

……しかし、今思えばそれが良かったのかもしれません。世界大会に参加するきっかけになったからです。大会という目標を定めれば勉強へのモチベーションを保つことができるし、優勝というゴールを目指せば効率的に学べるだろうと考えました。

加藤
そして2013年にはWBC 中国に3位入賞、その後は2度も中国チャンピオンに輝き、2017年には世界大会で8位に入賞。経営されているカフェは南京はもとより中国でも際立った存在だとお聞きしました。まさに有言実行ですね。

ジェルミー
ありがとうございます。情熱だけは、人一倍持っていたのかもしれません。

大都市も地方も一丸となり、中国全体のコーヒーカルチャーの底上げにチャレンジしたい。

加藤
現在の中国のコーヒー文化は、ジェルミーさんの目にはどのように映るのでしょうか。

ジェルミー
中国というのは広い国ですから、地域によってコーヒーカルチャーの発展度合いが大きく違います。地方に行くほど、人材と品質のクオリティはうなずけるものにはなっていないのが現状です。

それは、たとえば地方の(競技会の)チャンピオンになっても、大都市の人材と明らかな差が出てしまうほどに大きな隔たりがあります。そういったギャップを埋めていくのも自分の役割だと思っています。今は大会の時期などに合わせて地方へ赴き、あるべきコーヒー文化の考え方、技術などを伝えています。

加藤
それは、コンサルティング事業として行うのですか?

ジェルミー
いいえ。社会貢献として考えていますから報酬は頂いていません。これは中国の特徴なのかもしれませんが、独立したカフェを営んでいる経営者同士は、ライバルというより共に文化を育んでいく仲間という意識が強くあります。

みんなで集まって、どうしたら若い働き手が集まってくるのか? カフェオーナーとしてのリーダーシップとは? 世界大会前にはどんな練習をするといいのか? ワールドデビューした後の人材を現場でどう評価するのか?……ということを一緒になって考えるのです。

加藤
なるほど。中国のコーヒーカルチャーを底上げする一つのチームのような感覚なのですね。その「カルチャーを広める」ということと、ビジネスとのバランスはどのようにとっているのですか?

ジェルミー
ひとつ言えるのは、中国においてスペシャルティコーヒーのビジネスを考える時にもっとも重要視すべきなのは、若い人材が前向きにコーヒーの世界に飛び込み、自分を成長させながら仕事に取り組み続けられる環境をいかに作るかということです。

まだまだ中国のカフェ市場は発展途上だし、バリスタの給料は安い。でも、そこに来る若者は夢と誇りを持って働いています。彼らにコーヒーの技術だけじゃなく、私たちが教えられる価値観や世界観を伝えることで、より大きく成長することを促しています。

そして育った人材が世界的な競技会で優秀な成績を残せば、たとえば政府が支援してくれてより良質な牛乳が手に入ったりします。それは社会貢献の側面でも有益だし、ビジネス面でもプラスになることです。

中国サードウェーブの旗手して、感覚の鋭い店を大事に育てていく。

加藤
南京のお店(UNiUNi)に伺った時にも感じたのですが、お店の雰囲気がすごくいいですよね。スタッフ同士もお客さんとの関係性も、とてもフラットだなと。

ジェルミー
そのことが伝わって嬉しいです。メルボルンで働いていた時に、上司と社員との関係はとても親しみやすいものでした。常に意見を交換して、お互いが成長し合える関係性だったのです。それを思い出して、UNiUNiでも同じ環境を作ろうと努力しています。

加藤
そういったお店は中国でも増えているのでしょうか?

ジェルミー
たとえば今の上海では、デリバリーコーヒーが流行しつつあります。他にもオフィスや家で自動的に美味しいコーヒーを抽出できるテクノロジーを提供する会社がどんどん増えるでしょう。事実、大きな資本が投入されています。

お金があれば、つまり良い設備を使って良い豆を焙煎すればある程度のコーヒーはできます。でもそれは本当に美味しいコーヒーなのでしょうか? 私はそう思いません。

加藤
そういったお店はライバルになるのでしょうか?

ジェルミー
もちろん、巨大な資本を投入して広く店舗を展開するカフェを選ぶお客さまもいます。一方で私たちは、コーヒーを理解した上で楽しみたい人に届けたいと思っています。だからライバルではないのかもしれません。そして人が育つという面においては、私たちの方に軍配があがると考えています。

加藤
つまり、十分な勝算を持っていらっしゃるんですね。

ジェルミー
私たちが提供する価値は、店まで歩いて行ってバリスタと会話をし、コミュニケーションをとり、アクティビティを楽しみ、コーヒーの背景をも含めて味わってもらうやり方です。それは日本やアメリカで「サードウェーブ」と呼ばれるカテゴリーに属されます。

しかし、中国ではまだまだセカンドウェーブのお店が主流で、現在2500店ものセカンドウェーブ系のお店がありながら、2020年までには4000店舗に増えると言われています。その中で、次世代の波に取り組む私たちには十分な可能性があると考えています。

加藤
大きく発展する可能性があるわけですね。

ジェルミー
はい。けれど重要なことは、いかに多くの店を持つかということではありません。いかに強く、感覚の鋭い店に育てるかということです。お店を増やすときは、我々のセンスを失わないように努めながら、その中で若い世代を育てていきます。技術だけでなく価値観を含めて育んでいくのです。

加藤
私たちは、道具の感性を磨くことでジェルミーさんの挑戦を応援できれば嬉しいです。今後の中国のコーヒーカルチャーを予見するようなエキサイティングなインタビューでした。ありがとうございました。

ジェルミー
こちらこそ、ありがとうございました。

いかがだったでしょうか。

実はこの取材のあと、加藤とジェルミーさんはビジネスの話に花が咲いておりました。ORIGAMIとUNiUNiで何か新しい展開があるかも……と思うと胸が熱くなりますね。また新しい情報が入ったらこちらでお伝えします。次回もぜひお楽しみに!

※この取材の同日、UNiUNiで働く2018中国ブリューワーズカップチャンピオンの杜嘉宁(ドゥ・ジャーニン)さんにもお話を聞きました。そのときの様子はこちらの記事からご覧ください。

ジェルミーさんが運営するUNiUNiは、中国の南京にある本格ドリップコーヒーとエスプレッソコーヒーを提供するカフェです。外観もすごくオシャレで、お店の前で写真を撮る人も多いとか。南京に訪れた際はぜひお立ち寄りください。

UNiUNi web
https://weibo.com/u/5121061202

加藤信吾

Kato Shingo

with Barista ! 編集長 ライター / コピーライター
ORIGAMIのブランド設計に外部パートナーとして携わるなかで、様々なバリスタと出会い、各地のスペシャルティコーヒーに感動し、気がつけば一日2杯のコーヒーが欠かせない日々を送る。

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